デニス
彼は俺の住んでた学校の敷地内に住んでいた。
二児の父親で歳は32歳。職場が市役所ということで近所の専門家の車で毎朝
3人で一緒に通勤していた。
仕事も勤勉で酒も週末しか飲まない。
子供をとても愛していた。
安月給ながら貯金して買ったパソコンをよく俺が教えてあげていた。
子供も俺を見ると遠くから自転車をこぎながら「コージ!」と叫んでいた。
彼はナクルではあまり見かけないキシー人。
人懐っこい笑顔で一発でいいヤツだってわかるような気持ちのいい人間だった。
そんな彼の生活が崩れていったのは俺が日本に帰る半年くらい前からだと思う。
彼は近所に大きな家を建てて引っ越した。市役所を辞めて民間の職に就いた。
それから会うことは少なくなったのだけど俺がタウンに飲みに行くと必ず彼がいた。
ベロベロになるまで酒を飲み、周りの客や店員に絡んでいた。
つるんでいる仲間も普通の仕事をしているようには見えなかった。
そんな彼はどこか痛々しかった。
彼のあの人懐っこい笑顔はもう彼にはなかった。
そんな彼がナクルの自宅で殺害されたと連絡があった。
キシイ人が政治的に殺されたとは考えにくい。
混乱にまぎれた犯行かもしれない。
ケニアではこの1ヶ月で1000人近い人が殺され25万人ほどが家を逃げ
避難生活を強いられている。
報道であるような人種問題が全てではない。
社会の歪みがこういう形でケニアの弱者たちに及んでいるのんだ。
そしてその歪みを作った責任は自分にもあるのだ。
デニスのあの笑顔を奪ったのは俺のせいでもあるんだ。
だけど俺にできることがわからない。
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