フォトグラファーその2
昨日会った大石さんが今日はナショナルパークを回ると言う。
俺は参加する予定はなかったのだけれどパークで働いている隊員の家に
泊まっていたので俺も合流させてもらうことに。
動物カメラマンではない大石さんだが、そこはフォトグラファー。
200mmの望遠レンズを持って生まれて初めてというサファリに
興奮を隠し切れていないように見えた。
「あれがシロサイですよ。」
「どれ?」
「あの、遠くの方に見えるやつです。」
レンズを向ける大石さん。
でも200mmのレンズでは動物写真を撮るには足りない。
「ダメだわ。写らない。次行きましょ。」
サファリでいい写真を撮るのは難しい。
300mm以上の望遠レンズは必須だし、三脚を使うのも難しいから
高感度フィルムで高速シャッターを使わないと手ぶれでまともに写らない。
そうなるとデジタルの方が断然有利なんだけど、サファリは埃がひどい。
デジタルは埃に弱いからすぐに壊れる。
そもそもサファリは動物を楽しむ物だけではない。
無論、写真を撮って楽しむ物だけでもない。
あんな壮大な風景を小さなフィルムに切りとること自体素人には無理なんだ。
だったら、思いっきりその風景を体で感じて体に刻むことの方が大事なことだと思う。
でも、彼女はプロ。
それで飯を食っているんだ。
サファリの風を感じるそぶりは全くなくその200mmのレンズに写る世界が彼女の
サファリの世界のように見えた。
彼女の撮った写真を見てみたい。
世界各地でいろいろな物や風景を切り取ってきた人があの景色を、
俺が毎日歩いているあの街をどうやって切り取ったのか見てみたい。
俺が感じている景色と彼女が感じた景色はどう違うんだろう?
俺もカメラは持ってる。
日本にいる時から旅先には必ずカメラを持っていった。
でも、人物はほとんど撮ったことがない。
レンズを通すことによって俺とその人物のなかにへんな緊張が入るから。
風景もほとんど撮らない。
本当にきれいな景色はレンズを通さないほうがやっぱり美しいから。
だから、実際ほとんど写真は撮らない。
ここケニアでも治安の問題もあるけどフィルム写真は数えるほども撮っていない。
あんまり写真が好きじゃないんだと思う。
でも、写真を撮る目を持つことで今まで目に入らなかったものが見えてくることがある。
毎日見ている風景が突然違った物のように見えるときがある。
ありきたりの景色が突然不思議なほど感動的に見えるときがある。
ふとした表情にその人の全てが現れてるように見えるときがある。
だから、写真を撮る目で物を見るのは好きだ。
ケニアでも心の中で下ろしたシャッターの数は数え切れない。
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