2007-05-26

エイズ対策隊員って必要なの?



サッカーの試合にあわせてHIV/AIDSのレクチャーが
ジョイント開催されることになった。

試合の合間に20分ほどエイズ対策隊員が子供たちに
簡単なHIV/AIDSのレクチャーをする。

個人的には "あくまでサッカーでの交流" の方が良いんじゃないかっ
て思ってるけど、ちょっとしたことで子供たちが喜んでくれるなら
そりゃやるべきだよね。

そのレクチャーはエイズ対策隊員1名だけでやることになっていた。

"一人で大丈夫かな?"

なんて思ったけど俺は前日にナイロビ入りして
その日はコンピュータ分科会のミーティングで忙しかったので
そのレクチャーにはノータッチだった。

それに、その隊員が自らやりたいと希望したのだし、
その人はケニアに来る前もエイズ対策の経験がある人だし、
任地で頻繁にワークショップもやってるみたいだし、
20分程度のレクチャーなら大丈夫でしょ。

って思ってた。。



1試合目が終わり、疲れと敗北に打ちひしがれているときにその隊員から

"ちょっとレクチャーを手伝って欲しいんだけど・・・"

"いいですよ。何すればいいんすか?"

"わたし英語もスワヒリ語も話せないから通訳してくれないかな?"

"え?"

俺も語学は得意じゃないし、同時通訳なんてできるわけない。
何をするのか尋ねても本人もよくわかっていないといった状況。

それって今お願いすることなの?
任地であなたは何語で活動してるの?
そもそも自分でやるって言ったんじゃないの?

なんて思ったけれどそのレクチャーはもう5分後に始まる。

止めさせた法が良いかもと思ったけど、彼女が謙遜してるだけだと期待して
その場に臨んだ。


でも結果は予想以上にひどい物だった。


エイズという問題はすごくセンシティブなトピックであり、
知識よりも行動に訴えなければあまり意味がない。

だから、いろんなアクティビティを交えて本人に当事者意識を
持ってもらえるようにファシリテーターは工夫する必要がある。

それに加えて参加者の背景も十分に考慮しなければならない。

どういうリスクがあるグループなのか?
どういう性的行動を取りやすいグループなのか?
どういう生活環境・社会的立場におかれているのか?

センシティブな問題だけに言葉というのが本当に大切になる。
言語による誤解や中傷が起きてはならない場合も多い。

母国語で説明するのですらホントに難しいのに英語やスワヒリ語で
説明すると言うのはホントに大変なことだ。

だから、語学に自信が無いなら事前に原稿を用意してチェックしてもらう
必要もあるだろう。
もしくは語学の得意な人にファシリテートをお願いする場合もあるだろう。
もちろん、事前に十分な話し合いをして。

とにかくこういった問題がクリアできなければ効果は期待できない。

場合によっては逆効果にすらなりうる。



”母親からエイズは感染します。リスキーです。”


確かにこれは事実。
両親が健在で自分がすでに成人だったらこれを聞いても

"へー。そうなんだ。"

って思うだけだろう。

でも、今回の子供たちの中にはまだ小さい子供もいる。
エイズ孤児も多いし、母親がどんな人かも知らない子供も多い。

彼らにとってはこの一言はどんな意味を持つだろうか?

決して "リスキーです" の一言で片付けられる問題じゃない。
(リスキーですって表現自体どうかと思う)

子供の不安を解消させるような知識と情報を提供してあげないと
ただ不安をあおってしまうだけ。

事実その言葉を聞いて子供も教師も一瞬凍りついた。
それを見てた俺たち隊員も凍りついた。

だけど、ファシリテーターはそれに気づかないまま次へ次へと
進めてしまった。

俺も何とかフォローしたかったけれど、次へ次へとレクチャーは進んでいく。
それに彼女が何をしたいのか知らないのでどうにもできなかった。

レクチャー終了後はすぐにサッカーの試合があったし、
試合終了後はすぐにナイロビに帰らなければならなかったので
結局、子供たちにフォローすることができなかった。。


みんなが言ってた。

"やらないほうが良かったな"


ただでさえエイズ対策隊員という職種は何をしているのかわかりにくい職種。

なかにはコンドーム配って回るだけって思ってる隊員もいる。

その日のレクチャーについてみんなで話し合っていて、
学校で働いている隊員がとても仲の良い生徒とこんな会話をしたらしい。


"お前が惚れた女がエイズに感染してたらどうする?"

"キスは平気だぜ"

"セックスは?"

"コンドームつけりゃ大丈夫さ。"

"そうなんだ。本気で惚れたなら俺はその女と結婚するよ。"


それを聞いた彼らはこんなことを言っていた。

"エイズ対策隊員って必要なのか?"


すごく残念だった。

必要かどうかは俺にもわからない。
だけど、エイズ対策ってのには

友達同士にしかできないことがあって、

その国の人でしかできないことがあって、

外国人にしかできないこともある。

そして、エイズ対策隊員でしかできないこともある。

のだと思う。

そういう自分の立場で自分にできることをひとりでも多くの人が
やっていくことがとても大切なことなんだと思う。

俺も自分の立場で出来ることをやっていこうと思う。

とりあえず彼女と一緒にもう一度きちんとしたレクチャーでもしようかと思う。





2 コメント:

Hadija さんのコメント...

なんだかとても残念な展開だったね。。。せっかくの機会を活かしたい!という隊員の気持ちもあったと思うのだけど。

情報を伝えるときは、その手段ももちろん、対象者の年齢・テーマに関する理解度も前もって考慮に入れることも大事。言葉が通じ合わない関係であれば、言葉以外のツールが必要となってくる。まして子供たちの場合はそこに遊びの要素を入れたり、視覚に訴えられるようなものを用意したり、Communication toolを沢山用意する必要がある。

次回は他のエイズ対策隊員、エイズ対策隊員以外でも、一緒にやろう!という有志を何人か巻き込めたらいいね。人があつまれば、それだけアイディアも増えるだろうし(まとめていくことも大変になるけども)。

なんだか楽しそう!私も参加したいよ!!

Tef-Tef さんのコメント...

>なんだかとても残念な展開だったね。。。

そうなんです。本人がそれに気づいてないらしいんです。。
そして、また独りで近隣の学校を回ると言い出したので、
先日悪路はるばる彼女に"周りがどう感じているか"を伝えに行きました。
びっくりした彼女を見て私がびっくりした・・・。
本当に彼女はあの内容に満足してたみたい。

独りで活動するのって怖いね。
自己評価ってホントにあてにならんみたいだから・・・。